以下の説明を読み、すんなりと理解していただけるのは、私の講義に出席された方と最新刊『基礎から最高峰を目指す四柱推命の本』の読者だけでしょうが、あえて、現状ではまだ少部数しか世の中に流通していませんので、読者の対象が少ないことを承知の上で、こうした形で情報を発信することにしました。
占いの世界において、現在もファンというか信じる人が多くいる姓名学の始祖は、熊崎健翁氏であることは間違いないところでしょう。今回は、手元にある熊崎健翁著『姓名の神秘』をご紹介し、姓名学はどのようなものであるかを見てゆくことにします。
本がかなり傷んでいるため、奥付は欠損しています。序文と目次で12ページ、本文は278ページまでありますが、どうもこの後のページが失われているようです。また、本書のかつての所有者が表紙を付け直しているような形跡もあります。
序文が書かれた日付は、昭和4年5月。熊崎健翁氏の自序の日付は、昭和11年2月11日。また、本の正式なタイトルは、『運命判断 姓名の神秘』です。
自序を見ますと、熊崎健翁氏は、姓名の要素を文字と数理の視点から分析、研究。運命学として構築し、「姓名学が完成したのは大正三年頃でありました」と述べています。
現在の姓名判断に見られる、天格、地格、人格、総格、外格の五格の視点に触れられていますので、これらは熊崎健翁氏の創案のようです。しかし、当時、熊崎健翁氏は時事新報社に在職中であったため、出刊を控えていた経緯が述べられています。
その後、昭和4年に雑誌の新年の付録に一部を公表したところ、大きな反響があり、一冊の本として公刊することになったそうです。『運命判断 姓名の神秘』は改訂を重ね、30版になったと自序にあります。ですから、私の手元にある本は、初版から7年ほど年数が経った後の改訂版であろうと思われます。
同書「数はすなわち神なり」の項に十干が出てきます。現在の四柱推命がらみの姓名判断で言われているように、甲1、乙2、丙3・・・という十干と数字の対応が示されています。そして、
「太古より一より十に至る数が真理の神として尊崇され、信仰され、かつまた神秘的霊験のあったことがうかがわれる」
とあり、数理に対する神秘性が強調されていますが、このあたりは、まったく首肯できない部分になります。熊崎氏は事あるごとに科学の重要性を論じている割には、科学と両立することがない神秘主義的な要素を取り入れようとしているのです。「科学なのか宗教なのかどちらかはっきりせよ」と言いたくなります。
科学と宗教・神秘主義的なものを同じ土俵に上げて扱おうとすることは、そもそも無理な話のはずです。科学は唯物論、宗教は観念論で、水と油のような関係です。
同書の次の項の「吉凶の数理例」を見ますと、数にはもともと吉凶の性質が備わっていることを前提とした話が述べられています。文字の画数に吉凶の判断基準がないじょうたいでは、姓名判断の結果のよしあしを判別することができませんから、め数に吉凶を定義しています。これは姓名学を運命学に仕立て上げるための必須の作業なのでしょうが、このあたりが姓名判断の怪しさ、胡散臭さの根源になっています。
その数字と吉凶の関連が述べられている部分を一部抜粋し引用します(全文は写真参照)。
「◎健全、幸福、繁栄、富貴、名誉、権威の暗示力を有する数は。
一、三、五、六、七、八、十一、・・・・・・・
◎不如意、逆境、薄弱、批難、遭難、浮沈、病難、短命、非業等の誘導力のあるものは。
二、四、九、十、十二、十四、十九、・・・・・・」
とあります。
何を根拠にしてこの吉凶が定められているのかは不明です。熊崎健翁氏は、時事新報社勤務の当時としては相当のインテリですから、易学か数理学か何かに、何らかの根拠はあるであろうとは思います。しかし、どう考えてもおかしな話です。いきなり、根拠を示すことなく、吉と凶を決めているのですから。これをおかしいと感じない人には、かなり問題があるでしょう。
以上が熊崎健翁著『姓名の神秘』の大まかな内容です。最近のキラキラネーム(DQNネーム)には呆れていますが、いい名前は存在すると思います。特に芸能人にとって姓名は重要でしょう。しかし、いい名前だからといって、その名前に神秘的な力が秘められていて、その作用により、人生が吉になったり凶になったりすることは、あり得ないと考えています。
そもそも姓名判断の結果と、四柱推命の結果が一致するようなことはまずないでしょう。ですから、姓名は、画数など数えることなく、常識的な感覚で、いい名前、好くない名前を判断するだけで十分であると思います。姓名判断には、一切とらわれるべきではないと考えています。
※上記の説明には、本書独自の蔵干の考え方と、格局に代わる」「旺の逆転」という視点が含まれています。詳しくは、基礎から最高峰を目指す『四柱推命の本』を参照してください。
2014・5・21
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