以下の説明を読み、すんなりと理解していただけるのは、私の講義に出席された方と最新刊『基礎から最高峰を目指す四柱推命の本』の読者だけでしょうが、あえて、現状ではまだ少部数しか世の中に流通していませんので、読者の対象が少ないことを承知の上で、こうした形で情報を発信することにしました。
古来より、日干と陰陽が同じ干を「食神」、異なる干を「傷官」と定義されています。さらに、この定義のを元にして、食神と傷官それぞれに独自の事象がいわれています。
食神は、その名称からわかるように、「一生食いっぱぐれがない」とか「歌を歌うことを好む」とか、おおよそ好ましい事象がいわれています。傷官は、官(正官)を傷つけるという意味ですから、おおよそ好ましいとは思われない事象がいわれています。
しかしながら、日干が甲木の時は丙火が食神です。日干が乙木の時は丁火が食神です。丙火は陽干ですから力強い事象に関連しなければならないはずです。丁火は陰干ですから、穏やかな事象に関連するはずです。
ところが、ともに食神として括り、同じ作用であると考えるのが従来の四柱推命の基本的な考えですが、明らかに錯誤があります。
この点については、2000年1月に出刊した『命運を推す』に書きましたように、食神と傷官をまとめて「食傷」として扱うことにより、解決する方法を提案しました。
つまり、「陽干の食傷」「陰干の食傷」として、陽干であるか陰干であるかは重要事項ですので、後から明記するのです。「陽干の食神」「陰干の食神」と表記しても同じようなものですが、この方法ですと「陽干の傷官」「陰干の傷官」という呼称も必要になりますから、ただ煩雑になるだけです。食神と傷官をまとめて「食傷」と呼ぶ方法のほうが優れているのは明らかです。
ちなみに、「食傷」という呼称は中国の古典にも見られますので、私のオリジナルではありません。
食傷は、日干から生じる干ですから、よく「才能や能力の発揮に関わる」といわれますが、誤りです。「余人をもって代えがたい」と評されるような才能や能力を発揮するのは「通変の調和」が成立する必要があります。「通変の調和」については、『サクサクわかる 四柱推命の本』を参照してください。
次に、食傷の事象をいくつか列挙します。なお、以下の事象は食傷が日干に隣接している場合に限定されます。
・頭の回転が速い。打って返しでしゃべるため、失言を招きやすく、敵を作りやすい。
・現状を変化させようとする意思を醸成する。変化を求めるのは、現状への不満や不安が根底にある。
・行動力がある。しかし、時に慌て者にもなる。
以上の事象から派生するすべて事象が食傷の事象になります。
アップル社の創業者の1人スティーブ・ジョブズは、日干丁火で陽干の食傷戊土が2つも隣接しています。このことのみで、強烈な個性の持ち主であることがわかります。陽干の食傷が2つも日干に隣接しますと、サラリーマンは務まらないので独立するしかないことになります。
スティーブ・ジョブズの場合は、「通変の調和」が成立したため、数々の革新的な製品を生み出しました。もし、「通変の調和」が成立しなかったなら、ただのくせ者、変わり者で終わったことでしょう。
なお、食傷は財があってこそ良好な作用を発揮する面があります。財がなく、食傷だけの場合、食傷の事象は諸刃の剣のような状態になり、好ましくない面を常に伴うことになります。
※上記の説明には、本書独自の蔵干の考え方と、格局に代わる」「旺の逆転」という視点が含まれています。詳しくは、基礎から最高峰を目指す『四柱推命の本』を参照してください。
2014・4・9
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